「鈴木さん、おはようございます!」
「おや、富永さん。おはようございます。富永さんもジョギングですか?」
「ええ。最近、お腹の周りに贅肉がついちゃって。女房から口うるさく運動しろと言われていたんで、今日からジョギングを始めたんです」
「そうですか、それは大変ですね。でも体にはいいことですよ」
「鈴木さんは、もうジョギングは長いんですか?」
「私はもう学生時代からの習慣のようなもので、毎朝、町内をグルッと回ってます」
「へえー、学生時代からですか。大したもんだ」
「もう慣れていますから、そんなに苦にはしていませんよ。それより、今日から始めたんなら、富永さんのほうが大変でしょう。慣れないジョギングで、明日あたり、筋肉痛じゃないですか?」
「ハハハハ、そうですね。まあ、覚悟はしているつもりですけど」
「こういうのは持続が大切なんですよ、富永さん」
「持続、ですか」
「そうです。富永さんも最初はキツいでしょうが、三日坊主にならないよう、頑張ってください!」
「はい、頑張ってみます」
「それじゃ、私は家が向こうですので」
「そうですか。では」
翌日──
「お、おはようございます、鈴木さん」
「おはようございます、富永さん。ジョギング、ちゃんと続けてますね」
「ええ。さすがにキツいですけど、まあ、まだ二日目ですから」
「その調子で明日も頑張ってくださいよ」
「は、はい、が、頑張ります」
「それじゃ、私は向こうなので」
「それでは……」
さらに翌日──
「お、おは、よう、ご、ざ、い、ます、す、鈴木……さん……」
「おはようございます……。どうしたんです、富永さん? フラフラじゃないですか?」
「さすがに三日目になるとつらくて……」
「それにしたって、そのバテ方は異常でしょう。体の具合でも悪いんじゃ?」
「いやいや……ただ、四十八時間以上、走り続けているだけで……」
「よ、四十八時間! て、ことは、一昨日からずっと走りっぱなし……?」
「なにしろ、持続が大事ですから……。鈴木さんもそう言っていたでしょ? あ! 私はこっち方向なので、ここで失礼します……」
「……そんなバカな」