「マコちゃん、頼むよ。この前みたいに、おぢさんにしてくれないか？」
　おぢさんはマコちゃんに頼み込んだ。だが、その表情には薄ら笑いが含まれている。大人のずるがしこい企んだ目だ。
　おぢさんは、マコちゃんが一人で留守番しているとき、前触れもなく家にやってきた。マコちゃんのパパのお兄さんなのだが、マコちゃんはこのおぢさんのことがあまり好きではない。それなのに、時折こうして来ては、マコちゃんに必要以上のスキンシップを求めてくるのだ。何でも、おぢさんには子供がいないから、余計にマコちゃんのことが好きなのだと言う。顔を合わせる度に、「おぢさんの養女にならないかい？」と言われていた。もっとも、まだ幼いマコちゃんには、何のことかさっぱり分からないのだが。
　おぢさんによって、部屋の隅へ追い込まれた格好になり、マコちゃんは泣きベソをかきそうな顔になった。
「ええっ……だってぇ……」
　もじもじと困った様子のマコちゃん。
　おぢさんはそんなマコちゃんに微笑みかけた。
「またお小遣いをあげるよ。それならいいだろ？」
　おぢさんの「お小遣い」という言葉に反応し、マコちゃんは顔を上げた。迷っている。
「この前、マコちゃんにしてもらって、おぢさん、とても気持ちよかったんだ。またしてくれると嬉しいな」
　子供をエサで釣ることなど簡単だ。そう言いたげに、おぢさんはほくそ笑む。
　結局、マコちゃんはおぢさんがくれるというお小遣いの誘惑に負けた。
「じゃあ、ちょっとだけだよ」
「ホントかい？　ありがとう、マコちゃん！」
　おぢさんは破顔すると、足を投げ出すように大きく開き、ソファにもたれこんだ。自分の家でもないのに、厚かましい態度だとマコちゃんは心の中で思う。
「さあ、始めてくれるかい？」
　おぢさんに促され、マコちゃんは仕方なく手を伸ばした。本当はイヤなのだが、お小遣いのためだ。マコちゃんはおぢさんのとても固くなった部分に触れた。
「どうだい、マコちゃん？　おぢさんの、とても固くなっているだろう？」
「うん」
　マコちゃんは素直に答えた。
「さあ、早く気持ちよくしてくれないか。おぢさん、マコちゃんにしてもらうのを楽しみにしていたんだよ。さあ」
　マコちゃんはとっとと終わらせようと、指に力を込めた。すると、おぢさんが顔をしかめる。
「マコちゃん、乱暴にしちゃダメだよ。最初はそっとやってくれないか。そして、段々と早くしていくんだ。そうしてくれると気持ちいいんだよ。分かるかい？」
　マコちゃんは面倒くさかったが、おぢさんの言うとおりにした。すると、おぢさんの体が弛緩したようになり、口から大きく息を吐き出す。
「そうそう、そうだよ。その調子だ。……ああ、気持ちがいい。やっぱり、マコちゃんにしてもらうのが一番だな」
　そんなことをおぢさんに言われても、マコちゃんは別に嬉しくなかった。早く終わらせて、お小遣いをもらいたい。その一心だ。
　やがて、おぢさんの要求はエスカレートしてきた。
「マコちゃん、今度は直に触ってやってくれないかな？」
「え？」
　マコちゃんが戸惑っていると、おぢさんは服を脱ごうとした。それを見て、マコちゃんは慌てる。
「おぢさん、このままでいいよおーっ！」
　困ったようなマコちゃんの顔。だが、おぢさんは聞き入れなかった。
「はっはっはっ、マコちゃんは恥ずかしがり屋さんだな。男の人の裸なんて、パパと一緒にお風呂に入っているんだから見慣れているだろう？」
　それは確かにその通りなのだが、やっぱりパパとおぢさんとでは違う。
　しかし、とうとうおぢさんは服を脱いでしまった。
「さあ、マコちゃん、続けてくれないか？」
　そう促されたマコちゃんは、もう一度、おぢさんの固くなった部分に触れた。さっき触ったときよりも、今度は直なので、何だか熱を帯びているような感じがする。マコちゃんは仕方なく、また、おぢさんを気持ちよくさせていった。
　すると、おぢさんが呻いた。
「うまいよ、マコちゃん。とても上手だ」
　おぢさんはそう褒めてくれるが、マコちゃんは嬉しくもなんともなかった。とにかく、早く終わればいいと思う。それに、こんなところを帰ってきたママに見られたらどうしよう。
　マコちゃんの焦りは、指の動きにも表れた。最初はゆっくりだったのが、今は倍くらいの速さになっている。
　それがおぢさんをうまく刺激したようだ。おぢさんは恍惚としたような表情になる。
「ああ、いいよ、マコちゃん……気持ちいいよ……」
　一方、マコちゃんの手は疲れてきていた。次第にスピードが鈍り始める。
　すると、おぢさんがうわずった声で言った。
「マコちゃん、そのまま！　やめないでくれ！」
　そうは言われても、マコちゃんも限界が来ていた。
　そのとき──
　ピンポーン！
　玄関のチャイムが鳴った。
「ママだ！」
　マコちゃんはパッとおぢさんから離れると、玄関へ走っていった。
　おぢさんはと言えば、いいところで中断されて、渋面を作る。しかし、こんなところをマコちゃんのママに見られたら大変だ。おぢさんは慌てて脱いだ服を着始めた。
「あら、誰か来ているの？」
「うん、おぢさん」
　玄関の方で、マコちゃんとマコちゃんのママのそんな声が聞こえてきた。
　応接室にマコちゃんのママが顔を出した。その腰のところには、マコちゃんがしがみつくようにしている。
「あら、お義兄さん」
　マコちゃんのママは、意外な来客に驚いた様子だった。
　おぢさんもちょうど服を着終わったところで、焦りながらも会釈をした。
「すみません、突然、押し掛けて来ちゃって」
「いえ、いいんですよ。今、お茶でも煎れますので。──マコちゃん、手伝って」
「はぁーい」
　二人が出て行くのを見届けると、おぢさんはホッとして、再びソファにもたれた。どうやらバレなかったようだ。おぢさんはマコちゃんに揉みほぐしてもらった肩へ手をやり、首を回した。