RED文庫]  [新・読書感想文


あなたの寿命を教えます


 某月某日、博士と助手の青木は、世紀の大発明を成し遂げた。
「よし、完成じゃ!」
「遂にやりましたね、博士!」
「ああ、長年の研究が、ようやく実を結んだよ!」
「人間の寿命は、すでに生まれたときから遺伝子によって決められているという説が、これで証明できるわけですね!」
「もちろんだとも。ただし、不慮の事故や生活習慣病による発病は、その限りではないが」
「それでも凄い発明です! この『寿命計測マシーン』は!」
「うむ。このベッドの上に三分ほど寝れば、たちどころに自分の寿命が計測されるというわけじゃ! どれ、私自身が実験台の第一号になってみよう!」
「だ、大丈夫ですか、博士!? もしも、余命があとわずかだったりしたら!」
「青木くん、これでも私は健康には自信があるつもりじゃよ。これまで半年に一回は必ず人間ドックに行っているが、一度も悪いところなど見つかったことなどないのだから!」
「そ、そうですか。それならばいいのですが……」
「心配性じゃのぉ、君も。私は百歳まで生きるつもりだ! 見ていたまえ!」
 不安げな青木に構わず、博士は自分の寿命を計測してみた。
「は、博士! 結果が出ました!」
「どれどれ……なぬっ!? 『百十九歳』じゃと!?」
「凄い! ということは、人生の半分以上も、まだ残っているわけですね!」
「ほれ見たか、青木くん! だから健康には自信があると言っただろうが!」
「お見逸れしました、博士」
「君も研究室にばかり閉じこもっておらず、私のように健康に留意したまえ」
「はい、肝に銘じておきます」
「それにしても百十九歳とは……。これなら、まだまだ現役バリバリで研究を続けられそうじゃな! よーし、私はもっともっとやるぞぉ!」
 意気軒昂にそう誓った博士であったが、青木と祝杯をあげた帰りにトラックにはねられ、死ぬまで植物状態になろうとは、このときはまだ知る由もなかった。


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