朝起きると、ダイニングテーブルの上に朝食が用意されていた。
まだ温かいハムエッグと生野菜サラダ、おまけにコーヒーもエスプレッソマシンで出来上がったばかりというタイミングの良さ。あとはトーストでも焼けばいいだけだ。
それらに加えて、手書きのメッセージも添えられていた。
『おはよう、由梨。
昨日は遅かったようだね。
由梨にも付き合いがあるから仕方ないけど、あまりお酒は飲み過ぎないように。
パジャマにも着替えずに寝てしまうのはだらしないし、風邪をひいてしまうよ。
酔い潰れた君をベッドまで運ぶのは大変だったんだから。
それはともかく、いつも朝食抜きの由梨のため、簡単なものを作っておきました。
ちゃんと食べてから、仕事へ行くように。
愛しのタカシより』
メッセージを読み終えて青ざめた私は、慌てて玄関へ確かめに行った。
チェーンロックは外れているが、ドアには鍵がかかっている。他の窓もすべて確認したが、施錠はしっかりされていた。
「いったい、どうやって……!?」
私は戦慄に言葉を呑み込む。
タカシと名乗る見ず知らずの人物が残していったメッセージを握りしめながら、昨晩、何者かに侵入されたらしい部屋の中で、独り暮らしの私は恐怖に怯えてへたり込んでしまった。