RED文庫]  [新・読書感想文


残酷な未来視


「でも、意外だよなぁ」
「何が?」
「決まってんだろ。お前が三宅に交際を申し込んだことさ」
「あっ、オレもそう思った。よりにもよって、どうして三宅なんかと」
「そうだよ。クラスの女子なら、他にも可愛い子いるのに。どう見たって、三宅は地味過ぎんだろ」
「そりゃあ、確かに今は地味かも知んねえけど、なぁーに、五年後を見てろって。彼女、凄い美人になるから」
「そうかぁ? オレにはとてもそうなるとは思えねえけど」
「オレも同感。美人なら、やっぱ白石とか中嶋じゃね? ちなみにオレが選ぶとしたら中嶋かな。あいつ、胸デカいし」
「中嶋ねえ……白石はともかく、中嶋はダメだ」
「何でだよ? オレの好みにケチをつけんのか?」
「お前の好みはどうあれ、彼女の場合、将来は今の面影がすっかりなくなるくらい肥満体型になるから」
「何でそんなことが分かるんだよ? お前の勝手な妄想じゃねえのか?」
「実は……今までお前たちにも黙っていたんだが、オレには超能力があるんだ」
「ちょ、超能力!?」
「マジかよ!?」
「本当さ。専門用語では『未来視』って言って、未来を見通すことが出来るんだ。ただし、オレの場合は目の前にいる人間に限られるけどな。未来予知のような、世界がどうなるかとか、そんなことはさっぱり分からない。数年後、数十年後のその人がどんな姿になっているか。そういうことを視ることが出来るんだ」
「すっげえっ! だから三宅を……」
「ああ、大人になった彼女を視たら、凄い美人になっていたからな。誰も見向きもしない今のうちに、オレが彼氏になっておこうってわけだ」
「クソォ〜、うらやましい能力だな。――じゃあさぁ、オレのことも見てくれよ。オレって将来、金持ちになってねえかなぁ?」
「あっ、オレも見て欲しい!」
「悪いが、そういうのはちょっと……」
「何だよ。友達甲斐のない野郎だな」
「そういうわけじゃないんだが……まあ、そこまで言うなら、一応、視てみるけど」
「サンキュ」
「んー、そうだなぁ……特に高級そうなスーツを着ているようには見えないなぁ。普通のサラリーマンっぽいけど。――やっぱ、服装だけで判断するのは難しいよ」
「ちぇっ! ――だったら、次はハゲるかどうか視てくれよ。ウチの家系、やたら髪の薄いヤツばかりだからさぁ」
「それならお安い御用だ。……んー、残念だが、ハゲるな」
「げっ! やっぱりかよ〜!」
「視るまでもなかったろ? 今だって、かなり生え際がヤバいだろーが」
「なあなあ、オレは? オレもハゲる?」
「えーと……あっ、お前は大丈夫だ」
「やったぁ! 生涯、髪の毛の心配をする必要はねえんだな?」
「ああ。お前はハゲる前に死んでるから」


<END>


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