「痛っ!」
予期せぬ激痛が走り、堪らずマコちゃんは悲鳴を上げた。自分の意思とは関係なく身体が勝手に反応をし、陸に上がった鮮魚のように身を捩じらせる。
「えっ、そんなに?」
さすがのヨシナリもマコちゃんがあまりにも激しいリアクションを見せたことに驚いた様子だった。ヨシナリとしては良かれと思ってしたことであり、彼女を虐めるつもりなど毛頭なかったのだが。
「ひどいよ……ヨシナリくん……」
可愛いマコちゃんの目には涙まで浮んでいた。ヤンチャな性格で知られるヨシナリを睨みつける。相当、痛かったのだろう。
ヨシナリは口をへの字にして考え込む。
「おかしいなぁ、そんなはずは……こうすると気持ちいいって聞いたんだけど」
「誰にそんなことを聞いたの?」
「父ちゃんだよ。今みたいにグリグリすると気持ちよくなるって」
「何かの間違いじゃない? だって、物凄く痛かったよ。血が出るんじゃないかって思った」
「まさか、血は出ないと思うけど……ねえ、もう一回、試してみてもいい?」
「えっ……? ヤだ……もう痛いのはイヤ……」
「今度は痛くないようにするからさあ」
「イヤ……」
マコちゃんは懇願するような目を向け、小刻みに首も振ってみたが、ヨシナリにはまるで伝わっていないようだった。それどころかヨシナリはすっかりこの検証に夢中なようで、許可も得ていないのにマコちゃんの足首に無断で触れる。
「ね? ね? もう一回、もう一回だけ……」
マコちゃんは恐怖すら覚えた。身を固くし、怯えた目でヨシナリを見つめる。しかし、男の子の力は女の子のマコちゃんには抗いようがないくらい強かった。
ヨシナリは先程と同じように、グッとマコちゃんに押し当ててきた。
その瞬間、またしてもマコちゃんを激痛が襲う。
「いっ、痛いッ! やっぱり痛いよ、ヨシナリくん! やめて!」
まるで身体の中にヨシナリのものが押し入って来るような痛みに、マコちゃんは両脚をバタつかせながら抵抗する。それをヨシナリは力任せに押さえつけようとした。
「大丈夫だって! こうすれば気持ちいいはずなんだから! オレを信じてよ――うわぁっ!」
暴れる脚を押さえていられず、とうとうヨシナリはマコちゃんに蹴り出されるような格好になり、背中からひっくり返った。
「もうヨシナリくんなんて大嫌いッ! 絶交するッ!」
マコちゃんは泣きながら部屋から出て行った。
それと入れ替わりにやって来たのは二人の共通の友達であるマサキだった。
「おい、マコちゃんに何をしたんだ!? 泣かせたんだろ!?」
マサキに詰問され、ヨシナリは口を尖らせた。本意ではなかったが、マコちゃんを泣かせてしまったのは事実だ。調子に乗ってしまったことを後悔する。
「……昨日、父ちゃんに教えてもらったんだ……こうすると気持ちいいって……だからマコちゃんにも喜んでもらおうとしたんだけど……」
そう言ってヨシナリは自分の足の裏を親指で押した。父親に教えてもらった通りに足つぼマッサージをする。
「おかしいなぁ、オレはこうすると気持ちいいんだけど……」