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ここに「吟遊詩人ウィル・闇の哀歌<エレジー>」をお届けします。
自サイト外で続けていた出張連載ですが、利用していたデンパンブックスがシステム障害に陥り、それにともなったリニューアルが一向になされない現状に業を煮やして、昨年より小説ネットワーキング“dNoVeLs”にて掲載してまいりました。本日、めでたく完結です。
今回、新たな掲載地でのスタートでしたので、内容的にはオーソドックスな、「ウィル」入門編を意識した作りになっております。シリーズを通して読んでいる方には、そのあたりで物足りなく思うかもしれません。でも、「ウィル」は「ウィル」です。それは筆者が保証します。
シリーズも回を重ねてくると、ワンパターンになってきます。でも、ワンパターンというのは、ある意味では“王道”ということで、マンネリを期待させるのもアリだと考えるのです。
例えば、「水戸黄門」。水戸のご老公が町人のご隠居になりすまし、諸国漫遊の旅。そして、行く先々で弱きを助け、悪をくじき、最後は印籠を出して正体を明かす――。TVシリーズは、もう第四十部を数えたそうで、キャストは変わりながらも今なお続いている息の長い時代劇です。その魅力は、やっぱり勧善懲悪のワンパターンでしょう。このワンパターンが視聴者の安心感を生み、支持され続けているのではないでしょうか。
また、別の例を挙げるなら、昔の「ヤッターマン」。これもワンパターンながら、タイムボカン・シリーズでは一番人気が高かった。ドロンボー一味のインチキ商売や小型メカの登場、爆発して裸になるドロンジョ(昔の方がエッチでしたよね)、そして、最後の「おしおきだべぇ〜!」(笑)。毎度毎度、やっていることは一緒なのに、毎週、観てたもんなあ。というようなわけで、ワンパターンには、なぜか人を惹きつける魅力があるのです。
当シリーズも、そういうワンパターンを踏襲しています。どこかの町や村にウィルが辿り着くと、必ずそこで事件が起こり、それを解決し、やがて去っていく。問われて答える「ただの吟遊詩人だ」の決めゼリフもありますし、ウィルの容姿に誰もがぽわ〜んとなるのもお約束。こちらとしては、そういうところで楽しんでいただければと思って執筆しています。
こうしてワンパターンを続けていくと、ちょっとした変化を与えたとき、とても効果的な作用を生み出してくれます。実は、それこそが最終的に狙っているところだったりして。ここで今、手の内を明かすわけにはまいりませんが、いろいろなパターン破りも考えていますので、どうぞ、ご期待ください。
なお、この出張連載は今後も継続していく予定です。とりあえず、次回作は「吟遊詩人ウィル・夢幻の狂死曲<ラプソディ>」となっております。「狂死曲」と書いて「ラプソディ」と読ませる(笑)。こちらはパターン破りではなくて、パターン通りの一作になりますが。また、お楽しみください。
では。
2010年1月18日 RED
※ 本書はdNoVeLsにて連載したものを加筆・訂正し、転載したものです。 (2011.2.13)
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