←前頁]  [RED文庫]  [「吟遊詩人ウィル」TOP]  [新・読書感想文



あ と が き

 ここに「吟遊詩人ウィル・許されざるもの」をお届けします。
 本作品は、ちょっと変わった経緯で書かれました。と言いますのも、穂高あきらさんの番外編競作企画第二弾「禁じられた言葉」に参加させていただいた作品なのです。
 この企画は、長編小説の番外編をあるテーマ(今回の場合は「禁じられた言葉」)に沿って書き下ろし(発表済みの作品も可)、書き手も読み手も楽しもうというイベントです。また、作品は各作者のサイトにて公開されている長編小説の番外編に当たりますが、「本編を未読の方でも楽しめる番外編であること」を参加条件としています。
 この企画を知ったとき、とても面白いと思いました。番外編は、なかなか長編小説に手を出しづらい読者にとって、お試し版として気軽に読めますし、そこで気に入れば、本編へ進むことが出来ます。そして、作者にとってもいいアピールの場で、しかも同一テーマを枷にどんな作品が書けるか、腕試し的要素も含まれ、チャレンジしてみようという意欲が湧いてくるというものです。
 さて、私の場合、長編作品といえば、そんなに数は多くありません。その中でも「吟遊詩人ウィル・神々の遺産」を選んだのは、自然の流れだったでしょうか。
 ストーリーは割とすんなり決まりました。「神々の遺産」の連載中、ある登場人物の家族のエピソードを読みたいという感想があったのを憶えていて、以前から、何となく考えていたのです。
 そこで今回は、「神々の遺産」の後日談を執筆致しました。本当は三部作なので、まだ第一部しか書いていない現状で後日談というのはおかしな話なのですが(苦笑)、第二部「神々の帰還」へのインターミッション的なストーリーと、今後のシリーズ展開に影響していく伏線を盛り込んでみたつもり。
 そして、私が今回の番外編で目指したのは、いつも通りの「吟遊詩人ウィル」でした。
 他の方の作品も読ませていただきましたが、その多くが、本編とは少し趣の異なった作風で書かれていたようです。本編が三人称であるのに対し、番外編は一人称にしたりだとか、普段よりもシリアス度を増してみたものだとか。それは番外編の位置づけとして、とても正しいと思います。単なる後日談とか、裏エピソードもいいですが、そういう新しいアプローチを本編に対して試みるのが番外編の所以ではないでしょうか。
 しかし、そう頭では考えながらも、私はいつもの「吟遊詩人ウィル」を書き上げました。それは初めての読者にとって、あまり本編と番外編に差違が生じてしまうと、本編を読むときに違和感を覚えるのではないかと思ったからです。
 この企画は、番外編から本編への導入である。そう考えたとき、私は普段通りを決断しました。もし、こういった企画参加ではなく、本編の読者サービスとして番外編を書くときは、前出のような新しい角度でのアプローチを試みたいと思います。
 ただし、本編の読者には、より楽しんでいただける趣向を凝らしてみたつもりです。特に最後のシーンとか(笑)。是非、いろいろな想像を働かせてみてください(笑)。
 といわけで、ほとんど新作の「吟遊詩人ウィル」だと言っても過言ではありません。番外編どうこうよりも、まずはお楽しみいただければと思います。

2004年8月31日 RED


←前頁]  [RED文庫]  [「吟遊詩人ウィル」TOP]  [新・読書感想文