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部活動を終えたつかさが琳昭館高校の正門をくぐると、そこにアキトが待っていた。
「よお!」
アキトは先程の一件などなかったかのように、屈託ない笑顔を向けてくる。むしろ、つかさの方が元気がなかった。
「ごめん」
「何が?」
突然、謝るつかさに、アキトは尋ねた。
「アキトはボクのためにしてくれたんだよね。それなのに……ごめん」
「いいさ。オレが勝手にやったことだ。お前が気にするな」
「でも……」
「それに、もうお前が先輩たちからいじめられることもねえだろう」
「?」
「分かってねえのか? オレは空手部の連中をぶちのめした男なんだぜ。そのオレを今度はお前がぶん殴った。てことは、お前が一番、強いってことだろ?」
「あ」
つかさはようやく、そのことに気づいたようだった。アキトはしょうがないなあと言うように頭を掻く。
「もっと自分に自信を持てよ、つかさ」
アキトはつかさの背中をバシッと叩いて、通学路を歩き始めた。
つかさは慌てて、アキトの後を追った。
「ありがとう」
「よせやい。オレたちはダチだろ?」
「そうだね」
やっとつかさの顔にも笑顔が戻った。
「まあ、どうしても礼がしたいって言うなら、ラーメンの一杯でもおごってもらおうかな」
アキトは不意に足を止め、指を差した。琳昭館高校のすぐ近くにあるラーメン屋《末羽軒》だ。
つかさは苦笑した。
「分かったよ。おごればいいんだろ、おごれば」
「じゃあ、ダイナマイト・にんにくラーメンのちゃんこ盛りな♪」
吸血鬼<ヴァンパイア>がそんなもん食うなよ(苦笑)。
「私はヘルシー・わかめラーメン♪」
その横から、いきなり薫が顔を出した。
「なんで、薫まで?」
つかさが疑問を抱くのも当然だ。しかし、薫は平然としたもの。
「男が細かいことを一々、気にしないの! さあ、ラーメン、ラーメン♪」
「おう!」
つかさは薫とアキトに押し切られ、二人に挟まれるようにして《末羽軒》に入った。
つかさの財布には、一足早い秋が来そうだった。
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