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WILD BLOOD

第4話 内なるケモノを解き放て!

−7−

「一年A組、仙月アキト! 入ります!」
 わざわざクラスと名前を名乗って、アキトは二階にあるカウンセリング室のドアを開けた。すると奥にあるパイプのフレームに白い帆布を貼っただけのパーテーションの向こうから、毒島カレンが顔を出す。パーテーションの向こう側は事務机があるのだろう。カレンはそこに座っていて、アキトの訪問に身を後ろに反らすようにして顔を覗かせているのだ。窓からの光がパーテーションにカレンのシルエットを映し出し、そうと知れる。それは見事なボディ・ラインをも浮かび上がらせ、思わずアキトの喉元をゴクリと鳴らした。
「急に呼び出して、すまなかったわね。お昼はもう済んだ?」
 カレンはアキトに微笑むと、一旦、パーテーションの陰に引っ込んで、立ち上がった。アキトはその隙に、後ろ手にドアの鍵をかける。こらこら。
「カレン先生のお呼びとあらば、この仙月アキト、いついかなるときでも参上するぜ」
 アキトはキザに決めた。カレンは面白そうに小さく笑う。
「まあ、口が上手なのね」
「口の使い方なら、経験豊富な先生にもご満足いただけると思うけど」
 どうしてそっちへ持って行きたがるのか(苦笑)。
「あら?」
 部屋に危険な男を招いたとも知らず、カレンはアキトの姿を見て、声を上げた。思わず、アキトは自分の体を見下ろす。
「どうしたの? 服が濡れているじゃない?」
「ああ、これはクラスの凶暴な女にお茶をぶっかけられただけで」
 薫がこの場にいたら、きっと「凶暴な」という言葉に反応して、さらに怒り狂っていることだろう。
「平気なの?」
「まあ、これくらいへっちゃらだよ」
「そう」
 カレンはアキトの言葉を聞いて、また笑みを漏らした。だが、この笑みはこれまでのものよりも邪さを感じさせる。それにアキトが気がついたかどうか。
「それより、先生も大胆だね。生徒をこんな所に連れ込んだりして。まあ、オレの魅力に惹かれる気持ちも無理はないけどね」
 ……この男が気づくわけないか(ため息)。
「とにかく座って」
 カレンは目の前のイスをアキトに勧めた。
 それはカウンセリング用のどこにでもある簡素なテーブルとイスだ。アキトは言われるままにイスに座った。カレンも反対側に腰掛け、アキトと対峙する。二人の視線が絡んだ。

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