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WILD BLOOD

第5話 野獣、涙の咆哮

−11−

「グオオオオオオオッ!」
 腹の底から怒りのエネルギーを吐き出すように、木暮は咆哮し、赤鬼に突進した。純然たるパワー勝負ならば。だが、赤鬼は木暮の体当たりを真正面から受け止めた。
 ゴッ!
 肉体と肉体、骨と骨とが激突する音が聞こえた。赤鬼は吹き飛ばされなかった。木暮の突進をかろうじて止める。だが、木暮はがむしゃらに押し切ろうとした。
「甘い!」
 赤鬼はそう言うと、突如、いなすように体を引き、木暮の右腕を抱え込むようにして投げた。相撲で言う小手投げの状態だ。赤鬼の柔軟に対応した技に、木暮の体は呆気なく地面に転がされた。
 ──チクショウ!
 木暮は悔しさのあまり歯ぎしりをした。すぐに起きあがって、反撃しようとした。
 だが、すでに赤鬼の方が攻撃態勢を整えており、木暮は息を呑んだ。赤鬼の左脚が真っ直ぐ頭上に振り上げられている。
「喰らえ! マサカリ落とし!」
 それはタメの効いたかかと落としだった。マサカリが振り下ろされるように、木暮の頭頂部を襲う!
 ガツッ!
 怪物に変身した木暮も、さすがにこの一撃は効いた。重く鈍い衝撃が頭部に響き、木暮は思わず膝をついた。
 赤鬼はその隙を見逃さなかった。再び左脚が振り上げられる。
「もう一丁、喰らいやがれ!」
 木暮は赤鬼のマサカリ落としを見上げた。
 ──殺られる!
 一瞬、あきらめかけた。所詮、自分はいつも他人に踏みにじられる存在に過ぎないのだと。せっかく得た力すらも扱えないダメな人間なのだと。
 しかし、心の奥底ではもがいていた。今までの自分を変えたい! そして、今がチャンスなのだ!
「なに!?」
 次の刹那、驚愕の表情を浮かべたのは赤鬼の方だった。木暮が片腕一本でマサカリ落としを受け止めたのだ。
「グアアアアアアアッ!」
 木暮はそのまま赤鬼の足首をつかみ、力任せに振り回した。脅威のパワーがなせる技だ。赤鬼の体は、まるでバットか枕のように軽々と扱われた。
「ガアアアッ!」
 赤鬼の体が地面に叩きつけられた。二度、三度──いや、徹底的に痛めつけられた。赤鬼は逃れることも出来ず、ひたすら頭部をかばうのに必死だった。だが、それも長くは続かない。次第に全身から力が抜けた。
 気を失ってもなお、木暮は赤鬼に攻撃を加えた。顔を潰し、全身を切り刻んだ。やがて、赤鬼の姿が人間に戻ったところで、木暮は手を止めた。これ以上やったら、死んでしまったかも知れない。それでも木暮の闘争本能はくすぶり続けていた。

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